R8・2・10研究発表会 特設サイト
更新日:2026年2月18日
こちらは、令和8年2月10日(火曜日)に行われる令和6・7年度墨田区教育委員会研究協力校 研究発表会のための特設サイトです。新しい情報を随時アップロードしてまいります。本校の研究については、本ホームページ「第三吾嬬小学校の研究(令和7年度)」を合わせて御覧ください。
墨田区立第三吾嬬小学校 研究発表会 案内(参加申し込み)



1次案内
ご参会いただいた皆様への御礼

4〜6年生有志実行委員の児童
この度は、令和6,7年度墨田区教育委員会研究協力校 墨田区立第三吾嬬小学校・研究発表会にお越しいただき、誠にありがとうございました。区内、都内はもちろんのこと、北海道旭川市、石川県津幡町、静岡県静岡市等、遠方よりご来校くださった先生方もいらっしゃいました。参観者は258名と、想像していた以上の皆様にご参加いただき、教職員一同、大変感激しております。
この研究発表会は、本校にとっては一つの区切りであり、また新たな出発点になりました。子供たちの幸せのため、これからも教職員一同力を合わせて、この学校教育改革を推進してまいります。
ありがとうございました。
墨田区立第三吾嬬小学校・研究発表会
5校時 学習時間公開
令和8年2月10日(火曜日)5校時
1の1 算数、1の3 国語
2の1 生活、2の2 算数、2の3 国語
3の1 社会、3の2 国語、3の3 理科
4の1 理科、4の2 総合、4の3 音楽
5の1 体育、5の2 社会、5の3 国語
6年生少人数算数
第1部 「私たちにとっての『主体性』〜児童主体のQ&A〜」
研究発表会の幕開けは、児童による「私たちにとっての『主体性』〜児童が答えるQ&A〜」コーナーでした。4年生から6年生までの総勢50名ほどの有志児童実行委員が、自分たちのことばで学校の紹介を行い、お集まりいただいた方々からの質問に直接答える時間を持ちました。本校の取組の成果として、児童の様子をそのままご覧いただくことができました。
第2部 教育委員会あいさつ、研究発表、指導・講評
1 教育委員会あいさつ 墨田区教育委員会教育長職務代理者 岸田玲子様
2 研究発表 本校研究推進委員会
3 指導・講評 墨田区教育委員会事務局指導室 指導室長 石坂泰様
研究発表会 謝辞・閉会の言葉
第3部分科会後にそれぞれの会場で謝辞、閉会の言葉をお伝えしました。
本校の研究を導いてくださった講師の先生方の紹介
西留 安雄 先生
西留 安雄 先生
日本新たな学び方研究開発ネットワーク代表。元東村山市立東萩山小学校・大岱小学校長。
高知県教育委員会スーパーバイザー・高知県教育センター若年研修アドバイザーを経て、高知県津野町・越知町・安田町・大月町・三原村、群馬県高崎市、長野県青木村、北海道南富良野町、沖縄県南城市、同与那国島、熊本県荒尾市をはじめ、全国各地の授業改善・学力向上の指導に当たっている。大岱小学校在職中、文部科学省学力向上推進事業推進校として学力向上の研究を進める。大岱小学校には校長として7年間在職し、この間、指導困難校だった同校を、授業と校務の一体改革で、都内でもトップクラスに引き上げた。
ホームページ 『西留安雄の教育実践』 https://www.nishidome-yasuo.net/
著書 『子供が自ら学びだす「教えない授業」を創る』 『超多忙な教師たちを救う学校改革の極意』『どの学校でもできる!学力向上の処方箋』『学びを起す授業改善』他 (出版社:ぎょうせい)
(以上、ホームページ プロフィールより)
【西留安雄先生 第3部講演会・資料】
令和8年2月10日(火曜日)研究発表会第3部の分科会・西留安雄先生講演会の様子をお届けします。
演題「子どもが創る授業と校内研修」
澤田 稔 先生
澤田 稔 先生
上智大学 総合人間科学部教授 教職・学芸員課程センター長
【研究テーマ】
福祉的再編を基軸とした次世代型公教育システムの開発
公立デモクラティック・スクールのカリキュラム・教育方法論に関する日米比較研究
話し合い活動を重視した道徳授業の根本原理となる批判的討議倫理学の理論的基礎研究
日本における多文化教育の構築に関する研究−外国人児童生徒とともに学ぶ学校教育の創造
現代アメリカ合衆国における批判的ペダゴジーの最前線:ポストNCLBの理論と実践へ
現代アメリカにおける道徳教育のポリティクス:批判的教育研究から見た人格教育の諸相
【論文】
「批判的教育学から見た学習指導要領改訂動向の現状と課題ー現代日本におけるカリキュラム・ポリティクス試論」 (2025.10)
「社会的公正という視点から「個別最適な学び」なるものを問い直すー「個性化教育」の可能性の所在ー」 (2025.09)
"A Practical Logic of Socially Just Education in Late Modernity and its Inevitable Dilemmas: Suggestions from Critical Educational Studies" (2023)
「新学習指導要領における『探究』的学習の実践的意義と諸課題:デューイの『探究』論を手掛かりに」(2020.09.15) 他
(以上、上智大学研究情報データベースより)
「公正な教育と個別最適な学び」 https://youtu.be/GttxR75atw0?si=3AtZTwkTP-TLc5hj
(独立行政法人教職支援機構「単元内自由進度学習から考える『子どもを主語にした個別最適な学び』セミナーの歩き方」より)
【澤田 稔先生 第3部講演会・資料】 (準備中)
研究発表会第3部分科会の澤田稔先生の講演の様子をお届けします。
演題「探究的な学びのための授業づくりへ」
中島 雅子 先生
中島 雅子 先生
埼玉大学教育学部 教授 OPPA論研究会会長
公立高校の理科(化学)教員として30年間勤務したのち、2015年から埼玉大学教育学部准教授、2025年より現職。専門分野は、自己評価による資質・能力の育成とその評価、自己評価による学習・授業改善。
【論文】
「OPPA論における「問」の質とその効果に関する研究:中学校理科「電気」単元におけるOPPシートの活用を中心として」(2020)
「理科教育における授業改善のための教師の自己評価ーOPPA論を中心としてー」(2019)
「構成主義に基づく概念の形成過程を重視した授業のあり方:ー「生成的学習モデル」を中心としてー」(2013)
(以上、Researchmap より)
【主な書籍等出版物】
「OPPAでつくる授業:一枚ポートフォリオ評価論ー中学校理科編ー」堀哲夫、中島雅子(編著者) 東洋館出版社(2024.07)
「OPPAでつくる授業:一枚ポートフォリオ評価論 小学校編」堀哲夫、中島雅子(編著者)東洋館出版社(2024.03)
「一枚ポートフォリオ評価論OPPAでつくる授業」中島雅子 東洋館出版社(2022.12)
「自己評価による授業改善ーOPPAを活用してー」中島雅子 東洋館出版社(2019.08)
【中島雅子先生 第3部講演会・資料】
研究発表会第3部の中島雅子先生の講演の様子をお届けします。
演題「OPPAでできること 〜第三吾嬬小学校の評価改革〜」
中島雅子先生は、来る2月21日に埼玉大学においてOPPA論のシンポジウムを開催します。興味のある方はぜひご参加ください。
https://sites.google.com/view/nakajimalab/%E3%81%8A%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%9B
令和8年2月10日(火曜日) 学習時間公開 学習活動案
2月10日(火曜日)当日となりました。本日、1年2組の学級閉鎖他、インフルエンザ等による欠席者が多数おります。公開する学級も10名を超える欠席者のあるクラスもあります。ご参加いただく皆様も、感染予防にお気を付けいただければ幸いです。
2月9日現在、発表会当日、1年2組は学級閉鎖のため公開を中止いたします。
2月6日現在、4学級がインフルエンザのため学級閉鎖、9日(月曜日)は2学級が学級閉鎖の予定のため、学習進度に差異が出る可能性があります。ご了承ください。
本校の研究テーマ 「主体性」「主体的である(Being proactive)」の定義
「主体性」・「主体的である」とは
本校の研究が始まった令和5年度は、1年間をかけて「主体性とは何か?」、「どんな時に『主体的な』姿が見られるのか?」など、本質的な問題に取り組んでみました。そして、本校が研究を進めるにあたり「主体性」・「主体的である」とは、
〇自分で考えて、自分の言動を選択・決定する (自己決定)
〇自分で選択・決定したことについて、責任をもつ (自己責任)
という態度のことであると定義しました。
「自主性」と「主体性」の違いは?
「主体性」とよく似た言葉に「自主性」という言葉があります。本校の研究では、その二つの言葉をはっきりと使い分けることにしました。なぜなら、どちらの言葉も「自分から進んで」という意味であることは変わりありませんが、「自主性」は、子供自身の考えや思いから発出されるものではなく、他者(親、先生、仲間など)の期待(例:「こうすれば親は喜ぶだろうなあ」、「こうしないと先生に怒られるな」など)への忖度から出てくるものです。子供の「自主性」を期待するのは、大人のほうで、親や教員は、例えば「自主的に宿題をやってほしい」という願いを強くもっています。
それに対して、「主体性」は、あくまで子供本人からにじみ出てくるものです。子供自身の「こうしたい」、「こうなりたい」という純粋な思いから出てくる行動が「主体的な」行動であり、そこには他者の期待などは介入していません。
私たちは、子供を「主語」にする、というのは、このようなことであるとはっきり区別することにしました。
子供の「主体性」は、どのような場面で見られるのか?
令和5年度の研究で最も重要視したのは、「主体性とは何か?」と同時に、子供の主体的な様子とはどのようなものであり、どんな場面で見られるのかというものでした。そして、1年かけて様々な講師の話を聞いたり、書籍を読んだり、授業(当時はまだ「授業」と呼んでいた)研究をしたりする中で、最終的に私たちが見いだしたのが
〇児童の主体的な姿は、「遊び」に夢中になっているときに見られる
〇児童の主体的な姿は、仲間との協働的な活動の中で頻繁に見られる
という事実でした。
この発見により、本校の目指すものが、学習指導要領が最重視する「主体的・対話的で深い学び」と同じものであることが確認されたのです。
児童の良さを認め、全体に紹介
教員の役割 「指導者」から「伴走者」へ
一問一答式の一斉指導では、教員の役割は「指導者(教える人=TEACHER)」として、いかに児童の興味・関心を引き出し、わかりやすく教えられるかが重要視されてきました。ですから、これまでの学校の研究は、基本的に「指導法の研究」であったと言えます。
本研究で、児童が主体的に課題解決学習に取り組み始めてみると、教員の役割が180度変わってきました。まず、自分が教えている間にはなかなかできなかった児童の「見取り」が可能になりました。児童の学習活動を見てまわると、「この子はこんなことに気付いているのか。」「こんな発想をしていたのか。」など、児童の思考が良く見えるようになります。そこで、教員は児童の間を歩きながら、「いいね。」「へー、そんなことに気づいたんだ。」「どうしてそう思ったの?」などと声を掛けていきます。この声掛けは、児童のやる気を引き出し、思考を深める「評価」そのものになります。このように、児童の良さを見取り、声をかけることが「形成的評価」となり、児童自身の学びを加速させ、質を高めていきます。
教員のこのような態度は、学級全体に影響を与えます。形成的評価が頻繁に行われている学級では、児童同士もお互いの良さを認め合う雰囲気が醸成されていきました。学級が「居心地の良い場」になり、問題が起こりにくい集団への変化していきました。
児童の学びの「伴走者」となること。それは、教員の新しい役割、「見取りと評価」の精度を高めていくことに他なりません。
令和6・7年度 研究の概要 (本校の研究はこれまでの教育研究と何が違うのか?)

これまで、学校で行われてきた「研究」とは?
教員が選択・決定したテーマ、方法、内容で 教員が設定した「理想像」に 児童をどのように近付けられるか、高められるか、その方法(手段)=「指導法」の研究であった。
第三吾嬬小学校の進めている「研究」は…
「子供は本来主体的であり、良くなりたい・成長したい存在である」と信じ、これまで大人が決めた枠組の中で抑圧されてきた子供を解放し、子供の主体性を信じ、任せ・委ねることによって子供自身がどう伸びていくのかを見取る研究である。すなわち、
(1)「指導法」の研究ではないので、教師が考える「理想の児童像」は設定しない。児童を信じ、任せ、委ねてみたら、児童はどう伸びていくのかを見取る研究である。
(2)「指導者」としての教員の役割から脱皮し、新たな役割である「伴走者」としての資質・能力を高めるための研究である。

これまでの子供たちの様子

これからの子供たちの様子


児童の主体性を引き出すための「第三吾嬬小学校的アプローチ」

「子供が『主語』になる学校」にシフトするには、これまでの学校の在り方を根本から問い直し、本気で教員が決めた枠組みを取り払う必要があります。これは「コペルニクス的転換(J.デューイ『学校と社会』1899)」であり、「明治維新級の転換(現学習指導要領)」と呼ぶに値する大転換です。
日本の教員はまじめで、本当によく努力している。頑張っている。それなのに、学校の抱える課題は膨らむばかりで、日本は今、不登校が35万人を超え、子供の死因の第1位が「自殺」であるという深刻な状況にあります。なぜ、こんなことになってしまったのでしょうか。
これまで私たちは、子供のために良かれと思って、「善意」で、子供たちを大人の考えたレールに乗せ、枠組みに押し込もうとしていたのではないでしょうか。子供は本来、主体的な存在であり、良くなりたい、成長したいと思っています。かつて、小学校を退学になり、トモエ学園で学んだ黒柳徹子さんは「子供の幸せを考えるとき、私は与えることよりも、奪わないことだと思うのです。」と語っています。子供を信じ、子供に任せ、委ねてみたらどうか? そこから、私たちの研究はスタートしました。
「児童が主体となる『学習時間』の創出」 (学習改革の概要)
「授業(教師主導の一斉指導)」から「(児童が主体となる)学習時間」へ
学習リーダーが進める「セルフ学習」
教員主導の「一問一答式一斉指導」の特徴
・教員の役割はTEACHER 「指導者」である
・何を教えるか、どう教えるかは教員が決める
・教員は黒板の前に立ち、児童は全員黒板に向かって座る
・児童は静かに座って、教員の指示に従うことが求められる
・教員が児童の活動をコントロールするため、発言する際には挙手が求められる
・教員は計画的な板書を行い、児童はそれを指示されたとおりに写す
・伝達された知識の定着を図るために、一律の宿題が課される
・教員の指示通りに活動する児童が「良い子」と認められる など
教員が『主語』であることが前提の学校では
「授業」「指導」「教材」「教具」「教授」「教科書」などの用語が頻繁に用いられる
子供が『主語』になる学校(「令和の日本型学校」)が目指すものは
・何を学ぶのか、どう学ぶのかは学習者(=子供)が決める
・学習者は、常に他の学習者や教師と協働的に学習することができる
・学習者は、学習環境(座席、学習材、個・集団等)を自ら選択・決定できる
・教師の役割はFACILITATOR 「伴走者」であり、COACH 「コーチ」である
(「ファシリテーター」とは、「共同探究者」「よき質問者」であり、その心構えは、
・安心して話せる場をつくる。
・道に迷わないようにする。
・「わからない」を見つける。 (『本質観取の教科書 みんなの納得を生み出す対話』集英社新書 より)
第三吾嬬小学校は、教員が「主語」である学校から児童が「主語」になる学校への転換を図るために、これまでの学校の常識を丁寧に吟味にかけ、「教員主導」から「児童主体」の学校へと軸足を移すことに挑戦しています。教員主導の「授業」ではなく、児童が主体となる「学習時間」へ ー 私たちが何の抵抗もなく使っていた用語そのものを見直すことには、このような意図があります。
考察方法
第三吾嬬小学校における学習活動では、児童が主体的に考えを深めることを目的として、ワールドカフェやジグソー学習などの協働的なスタイルを取り入れました。これらの方法では、ペアやグループで意見を交流し、役割を分担しながら情報を整理し、課題解決に向けて協力することが求められます。活動を通して、児童は自分の考えを言語化し、仲間の意見を取り入れることで視野を広げ、より深い理解に到達する姿が見られました。
4つの学習スタイルは以下の通りです。
○ワールドカフェでは、グループで話しながら自分の考えをホワイトボードや模造紙に記入し、グループを移動しながら考えを深めていきます。
○ゼミナール型では、少人数でテーマについて議論しながら学習を進めます。課題発見から課題解決まで、グループの仲間と協働的に学習を進めるスタイルです。
○グループ集合型では、ペアやグループで意見を交流し、他のグループとも協力して課題を解決する学習スタイルです。
○ジグソー学習では、情報収集や整理の役割を分担し、自分の課題を責任感を持って調べ、持ち寄ることでテーマに対する理解を深めていきます。
さらに、3色マーカーやロイロノート、ホワイトボード、ふせんなどのツールを活用することで、考えの可視化が進み、学習の見通しを持ちながら取り組む様子が見られました。児童は活動の流れを理解し、次に何をすべきかを自ら判断する力を身に付けています。これにより、単なる意見交換にとどまらず、目的意識をもった協働的な学習が実現しました。
今後は、こうした学習スタイルを継続し、児童が自分の考えを深めるだけでなく、他者と協働して新たな価値を創造する力を育成していきたいと考えています。
R6〜R7年度 各学年の取組 (実践記録、学習活動の記録)
学習面での改革に取り組んだ本研究では、通常の教科の学習(S)と生活・総合的な学習の時間を中心としたProject-Based Learning(P)の側面からのアプローチを試みました。Sでは、一問一答式の一斉指導からの脱却を図るための「三吾(さんあづ)学習スタンダード」に基づく、「セルフ学習」や「学習リーダー」による学習時間の進め方、自由進度学習等に取り組んでみました。Pでは、課題設定から課題解決に至るプロセスを児童に任せ、委ねることにより、児童自身が主体的に探究的課題解決に臨むことができるような、教員側の「軸足のシフト」を図りました。
ここでは、各学年がどのような取組を行ってきたのかを紹介します。
評価改革 「自己評価」、「形成的評価」へのシフトチェンジ・OPPA論の導入
本研究を進めていく中で、テーマである「主体性の育成」は、それ自体が「目的」なのではなく、自己肯定感を高め、児童自身がウエルビーイングを獲得するための「手段」であるということが明らかになってきました。自己肯定感を高めるためには、子供自身が自分でやってみる体験が欠かせません。言われたことをやっているだけでは、達成感や充実感を味わうことはできません。もっと子供を信じて、やらせてみること。そして、その様子を「見取り、評価」することが重要であるとわかってきました。
研究のこのような流れから必然的に、私たちは「評価」観を見直すことに挑戦することになりました。
これまでの「通知表」に代表される「総括的評価」は、目標に準拠した観点別評価ではあるものの、何がどう良くなってきたのか、どこに課題があるのかなどが見えにくく、どうしても「人と比べる」評価になりがちでした。これが、児童の良さを見いだし、やる気を引き出すよりも、むしろ自分はダメな存在であるというマイナスの作用に働くことが多かったのではないでしょうか。
児童の「良さ」を見取り、良さを伸ばすような評価を、もっともっと大切にしたい。児童に任せてみたことによって、児童自身の「自己評価」がいかに大切かに気付くと同時に、教員の役割が変わる中で、私たちは「形成的評価」こそが必要であると考えるようになりました。

令和7年度に通知表を廃止するまでに、本校では令和5年度に、従来の通知表のうち、文章で評価を行っていた部分や行動の記録(教科の観点別評価と総合所見以外の部分)を、全て児童の「自己評価」に変更しました。さらに、令和6年度には、キャリアパスポートとの連携を図り、自己評価の部分をキャリアパスポートで示し、教科の観点別評価と総合所見のみに変更しました。
通知表がなくなった分、前期・後期に全家庭の保護者面談を実施し、ポートフォリオを見ながら、何が、どうできるようになったか、また課題は何かを説明することにしました。そこで大変有効な資料となったのが、学習時間に創り上げた「OPPシート」です。
OPPA(一枚ポートフォリオ評価)論とは

こちらの書籍を参考に研究を進めました
OPPA(One Page Portfolio Assessment)論は、山梨大学名誉教授の堀哲夫先生が開発した画期的な評価論です。
OPPA(「オー・ピー・ピー・エー」と読む)とは、概念や考え方の形成過程に注目した評価で、「自己評価」を重視しています。使用するのは、OPPシートというたった1枚の紙で、これが他のポートフォリオ評価とは一線を画するところです。
まず、学習前に、児童(=学習者)はその学習で学ぶことについての「(単元を貫く)本質的な問い」に対して、自分の考えを書きます。学習中には、毎時間の最後に「今日の学習で一番大切なこと」という学習履歴を記述します。どちらも限られたスペース内に簡潔に記す必要があるため、児童は自ずと学習内容を頭の中で整理することになります。これは学習者自身が自分の学びを客観視(自己評価)することにほかなりません。
そして、児童がそのシートに表現したものを教員が見取り、簡単なコメントを記すことが有効な形成的評価になります。加えて、シートには児童の学習中の思考が可視化されているため、教員にとっても、自己の指導を振り返り、次の指導に生かす(教員自身の「自己評価」)ことができます。そして、単元の最後に、始めと同じ「(単元を貫く)本質的な問い」に対する自分の考えを記し、それを学習前の自分と比較しながら、自己の成長を客観的に見て、単元を通しての学習の「自己評価」を行います。これら全てが、たった1枚のシートの上に表されるところが、このOPPシートの極めて優れた部分です。
OPPシートの実際 (「OPPAでつくる授業」小学校編 東洋館出版社より)

内側

外側

家庭学習改革 一律の「宿題」の廃止と「自学のすすめ」

4年生の自学ノートより
「今日習った漢字を10回ずつ書いてくる」などの一律の宿題は、一人一人の子供の実態に即していません。ある子にとっては必要のないもので、ある子にとっては難しすぎる課題となりがちです。そのうえ、「宿題」は無理やりやらされるものとなり、言われる(怒られる)からやっているという子がほとんどです。
それでも一律の「宿題」はなくなりませんでした。それは、子供のためというよりも、むしろ保護者や教員の安心材料だったからにほかなりません。「宿題」が出続けている間は、子供は自分で考えて、必要な学習をするという習慣は付きません。
さらに、宿題は家庭で行うものです。現代は、家庭の様子は様々で、同じ「宿題」が出されても「多すぎる」「少なすぎる」という両極端な意見が学校には寄せられています。子供の教育の責任は保護者にあります。家庭でどう学習するのか、また、学習するかどうかは、家庭が考えるべき問題です。
また、教員にとっては、児童の学力は学校の学習時間内で付けさせる責任があります。学校で解説だけして、「家で練習して、覚えておいてね。」というのはこれまで当たり前のように行われてきましたが、本校では「児童の学力は、学習時間内に付けさせる」ことを再確認し、一律の「宿題」を前提にして学力を付けさせるという考え方をやめることにしました。その上で、学校の学習時間が充実して、学ぶことの楽しさを知った児童は、必ず家庭でも学習できるようになると信じ、学習時間の改革に取り組んでいます。
これからの時代は、子供たちが自ら課題を設定し、自分の良さをどんどん伸ばしていくことが求められています。一律の宿題を廃止し、子供自身が自分で学ぶ習慣を付けさせるために、本校では「自学のすすめ」を使って、子供たちに学ぶことの楽しさを伝えています。

自分で学ぶ「自学のすすめ」
令和5年度から段階的に一律の宿題をなくすことを予告し、令和6年度の後期から一律の宿題を廃止しました。児童に「自学のすすめ」を配布し、学級で家庭学習の進め方について指導をしました。全体の半数の児童は、自分で見付けた課題に熱心に取り組むようになりました。一律の宿題をやらなかった児童が、「自学」には取り組むようになったという例もありました。
とは言え、特に低学年の保護者は宿題がないと何をさせれば良いのかわからないという声を数多く聞きました。そこで、令和7年度からは6年間を通して、自ら課題を見付け、家庭学習をするのが当たり前になるような取組を始めました。低学年では、担任から課題を提示して、児童に選択させる。中学年では、1週間の家庭学習の予定表を作らせて、自分で進められるようになるように教師が個別にアドバイスを行う。そして、高学年になった時には、自分で必要なことに取り組めるようにする。
はじめは何もやらなかった子が、自分から家庭学習をするようになるまでには時間がかかる場合もあります。子供の主体性を信じ、温かく見守りながら待つことが重要です。

リアル (R8.1月現在) 児童、保護者、教職員の意識はどう変わったか
【児童の意識】

【保護者の意識】
【教職員の意識】
令和5年度〜令和7年度 「児童の主体性の育成」研究の成果と今後の課題
【成果】 児童の変容
○受け身だった児童が「学習は自分たちで進めるもの」という意識に変化
以前の受け身な姿勢から、自ら学習を進める姿へと変化しました。現在では、教師が教室に不在であっても、自分たちで自律して学習 時間を進めることができるようになっています。
○学習リーダーを中心に学習時間を進めることが当たり前になり、意欲が向上
各教科において学習リーダーを分担し、全児童が学習リーダーを経験しています。1年生も学習リーダーを張り切って務め、自分たちで学習を進めることができます。「三吾学習スタンダード」により、児童自身が学習の流れが分かっているため、自分たちで学習を進行することが日常化しました。
○協働的な学びが広がり、全員参加の学びへ
仲間との教え合いを通して、これまで学習に参加が難しかった児童も、自然と学びに加わるようになってきました。学習内容の理解が深まっただけでなく、人間関係も改善され、安心・安全な学級風土が育っています。
○OPPシートによる振り返りで、深い学びと自己肯定感の向上
自分の学びを言語化することでより深い学びにつながっただけでなく、児童のメタ認知能力も向上しました。教師が一人ひとりにするコメントは、形成的評価そのものであり、児童の意欲につながり、自己肯定感を高めています。
〇学力調査「思考力・判断力・表現力」、「学びに向かう力・人間性等」に関する項目の向上
主体性育成の取組を始めてから現れた変容として、学力調査における「思考力・判断力・表現力」や「学びに向かう力・人間性等」に関する出題項目の正答率に顕著な向上の見られた学年が出てきました。
R6年度全国調査 現中1生 国語

R6年度 全国調査 現中1生 算数
R7年度 全国調査 6年生 国語
R7年度 全国調査 6年生 算数
R6年度 墨田区調査 現5年生 国語
R6年度 墨田区調査 現6年生 国語
R6年度 墨田区調査 現6年生 算数
R6年度 墨田区調査 現6年生 社会
R6年度 墨田区調査 現6年生 理科
R7年度 墨田区調査 4年生 国語
R7年度 墨田区調査 4年生 算数
R7年度 墨田区調査 4年生 理科
R7年度 墨田区調査 5年生 国語
R7年度 墨田区調査 5年生 社会
R7年度 墨田区調査 6年生 算数
○児童の活躍の場の広がり
「子供に任せるスタンス」に注力することで、自分で考え行動する姿が、学習面だけでなく、学校生活全体に広がりました。運動会、音楽会、周年行事などの運営も児童に任せることにより、成功体験が増え、児童の確かな達成感と自己有用感に繋がっています。
○児童の自己肯定感の変化
毎年2回行っている「質問紙チェック(i-check)」の結果、本校の児童は自己肯定感に関する多くの質問項目で全国平均値を下回り、「成功体験と自信」「充実感と向上心」「感動体験」という要素が十分ではないということが分かりました。しかし、主体性育成の実践を通し、令和6、7年度は、プラスの数値の項目が増えました。これは、教員がファシリテーターに徹し、児童を信じて任せ、児童の主体的な姿を追求してきた確かな成果だと捉えています。
【成果】 教員の変容
○主体的な児童の姿が明確になり、児童が主体となる学習時間の実践を重ねられた
全教員全学級が「三吾学習スタンダード」に基づき学習リーダーを中心とした学習時間研究を行い、実践を継続しています。「もっと児童に任せるには」「もっと児童の主体性を伸ばすには」と学年で検討・模索し、日々更なる改善に努めています。
○教員の役割が変化し、児童の学びを深く見取れるようになった
「この子は今、どんなことを考えているのか」、「どんな方法で学ぼうとしているのか」と児童の思考や学習方法に目を向けることで、児童の小さな成長に気づき、良いところを見取り、価値付け、形成的な評価ができるようになりました。
○OPPシートで児童一人一人の気付きや学びを確認し、学習活動に生かせた
OPPシートを通して、教員は学習中に見取りきれなかった児童一人一人の思いや気付きを把握できるようになり、見取ったことをしっかりと価値付けて短い言葉でコメントしました。また、これにより、教員が自分自身の姿勢を自己調整し、次時の児童へのアプローチに生かすことができました。
○「総括的評価」から「形成的評価」を重視するようになった
教員の役割の転換、通知表の廃止、OPPシートを活用した振り返りの充実により、一人一人の児童の良さを見取り、伸ばすことができるよになりました。
○教員の「見取り」の精度が高まり、児童の学びの質が向上した
教員の役割、評価観が、「見取り」の精度を上げてきました。これにより、児童の学びの質や、自己肯定感の向上に繋がりました。
【課題】
〇知識・技能の定着
基礎的・基本的な知識・技能の定着に、現段階で顕著な変化はまだ見られません。学習時間中の教員の役割としての「チェック」機能を高め、既習内容の振り返りや「キーワード」の活用、ICTによる定着確認を強化し、基礎・基本の定着を担保していく必要があります。
〇教員自身の役割 意識改革
この研究で最も難しかった点が我々自身の意識改革でした。これまでの価値観から180度異なる教育活動への戸惑いはなかなか拭い去ることができず、研究活動を通して何度も方向性の確認を行う必要がありました。今後は、成果をあげている実践例の共有や対話を継続し、教員自身の役割転換と意識のアップデートを継続していきます。
〇学校文化として根付くまで
本校の取組を学校文化として根付かせていくことが今後の課題です。この3年でつかんだ確かな手応えを胸に、学びを楽しむ児童の姿を原動力として、継続的に取り組んでいきます。
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